オフィス街のリラクゼーション店での出来事(学生時代バイト編)
それは吾輩が施術中の話だ。いや正確に言えばスタッフ全員が施術中の話である。
60分のコースをダラダラとこなしている最中突然その音は響き始めた。
「バンッ」
聞いたことある音だ、なんだ?
「シャーッ」
むむっ!これはカーテンを開ける音だな?
「バンッ」
またしても響く音と共に室内の空気が変わった。
窓を誰かが開けている・・・という意味では二つの意味で空気が変わったことになるな。
ビルの5階、リラクゼーション店の営業時間に窓を開ける理由なんてない。
空調だって効いている。
「シャーッ」 「シャーッ」
カーテンが次々に開けられている。その音は近づいてきている・・・
「シャーッ」
とうとう吾輩の施術ベッドのカーテンが開いた。
誰だ?
そこにはリラクゼーション店のダルダルになった着替え用Tシャツを着た男が立っていた。
そして申し訳なさそうに傍にはスタッフの姿が。
「どうしました?」
「いや・・・それが・・・急に」
よれよれのTシャツ男を見て吾輩はすぐさま理解した。
男の雰囲気が普通じゃない。焦点が合ってない。夢遊病かてんかん発作か?
奥開きタイプの窓でよかった・・・・・惨劇は免れた。
この男は窓を開けては施術中のカーテンを開ける奇行に走っていた。
さすがに全スタッフが集まり男の対応に追われる。
幸い他のお客さんには多少の騒がしさは感じているだろうが大事になっていることは知られていない。
男は興奮状態ではないので取り押さえるようなことはせず店の片隅に誘導し正気に戻るのを待った。
いつか教科書やネット勉強した対応を実際に行うことになるとは・・・
担当スタッフのよると施術中に急に起きたと思えば窓を開けだしたそうだ。
そして窓を順に開け終わるとベッドを仕切っているカーテンを開けだしたようだ
呼びかけに対しても反応せず担当スタッフも動揺してしまい何もできなかったという。
しばらくして正気を取り戻した男に話を伺うと、こういった事は初めてではないらしく良く起こるそうだ。
何やら証明書のようなものも見せてくれて障害があることと迷惑をかけて申し訳ないと謝罪された。
今回はその場で中止してタクシーを呼んでお帰り頂いた。
変わり者がたくさん働く業界で、変わったお客さんも割合多い。
今回のお客さんのようなことが今日もどこかで起きていることだろう。
誰だって揉んでもらいたいんだもの・・・❤